デザイナーとして勤めていたサラリーマン時代は、「21時ぐらいに帰れるのはいいほう」で、だいたい周りのデザイナーさんも同じような感覚だった。
中には2日徹夜は当たり前なんていう過酷な人もいて、この仕事を5年も続けていると「デザイナーは長時間労働はあたり前」という固定観念がしっかり根付いてしまう。
もちろん、デザインすることが好きでたまらないから時間なんて関係ない、と思う人はそれでもいいと思う。
特に若いころはもっといいものが作りたいという欲と体力にまかせて色々と試したくなる。
独立してフリーランスになってからは、時間に対する感覚が少しづつ変わってきたように思う。
デザイナーという職種は残業代がでないところがほとんどで、いわゆる「サービス残業」の意味がピンとこない職種である。
むしろ、「残業や徹夜をしてこそプロのデザイナーになる近道」みたいなことを言っている人が多く、そんな風潮がデザイン業界の長時間労働を後押ししている。
そもそも、残業代を払うと赤字になるような会社は、その会社のビジネスモデルがアウトなわけで、サービス残業を精神論にすりかえたり、景気のせいにしているような会社は長く生き残るのは難しいかもしれない。
私の場合は、フリーランスになってからは『いかに短時間で作業を終わらせて、いかに多くの収入を得るか』がひとつの楽しみにさえなっている。
娘の彼氏がパティシエをしているのだが、朝6時に出社して夜11時退社がほぼ毎日で、月の休日が1日しかないという。
心配になって話を聞いてみると、「好きな仕事を自由にやらせてもらえてるから、大変じゃないですよ。」とのこと。
効率的に仕事に取り組むことと、仕事を楽しむことは別次元の話、ということのようだ。
好きな事を夢中になってやるということは、無意識に人を成長させ、生きるために働くという退屈な日常の景色を、全く別な風景に変えてくれる。
好きなことを仕事にできるのならこんな幸せなことはないだろう。