専業フリーランスの究極の悩みはただひとつ、「どうやって安定的な仕事と収入を得るか」に尽きる。
50歳を過ぎて現役でグラフィックデザイナーをしている人の割合をご存知だろうか?
なんと20代にグラフィックデザイナーの職についた人のうち、50歳オーバーの現役デザイナーはたった1%と言われているのだ。
わたしの場合は、他にやりたい仕事がないので、必死にしがみついているというのが実情だが、何とか得意分野を見出して一応は現役を続けている。
こんなわたしにも「どうやって仕事を広げてるの?」と質問されることがある。
正直言って、わたしが教えてほしいところだが、最近ある論文を目にして共感できることがあったので紹介してみよう。
1972年にスタンフォード大学のマーク・グラノヴェッターが「人はいかにして職を得るのか」というテーマで論文を発表した。
管理職や専門職の人に「現在の仕事に就くために力になってくれたのは誰か」というインタビューし、その調査をもとに結果を導き出している。
意外にも力になってくれたのは、親しい友達ではなく、「ちょっとした知り合い」だったというもの。
人は自分と似たような考えを持った人たちとつながっているもので、誰でも小さなコミュニティに属している。
コミュニテイの内部では全員知り合いである一方で、他のコミュニティとは浅いつながりで結びついている。
同じコミュニティ内の人同士は、知っている情報が同じで、新しいつながりを開拓したい場合、その情報はあまり役に立たない。
むしろ、弱い絆で結びついている「ちょっとした知り合い」の別ルートの情報が役に立つのだ。
振り返ってみて、はじめて気づくことだが、新しい仕事につながる大きな転機があるときは、必ず自分とは少しタイプの違う人とつながりができた時に起きている。
そういったキーマンというべき人との出会いそのものは、運によることが大きいが、わたしに受け入れるだけの覚悟や準備ができていた時期の出会いだったと思う。
仕事を広げていくコツというもがあるとすれば、このあたりにヒントがあるのではないだろうか。
この論文が発表された時代は、SNSもなく膨大な数の人と接点をもつ手段はなかったわけだが、ネットが普及した今でも確信をついた視点だと思う。
サイトやSNSの向こう側にいるのは人であり、共感できる同じタイプの人と友達の輪を広げるだけでは、仕事を広げる手段としては何かが足りないのかもしれない。
また、大前提として必要とされないサービスは、どれだけあがいても淘汰されていくこと、を忘れてはいけない。
妻がピアノ教室をやっており、サイトからの集客のみで十分な数の生徒さんに来ていただいている。
これはピアノ教室を開いているこの地域の方々がお子さんの教育に熱心で、情操教育のひとつとして必要とされているサービスだったからだ。
仕事を大きくするコツ以前に、自分の提供しているサービスがどれだけの人に必要とされているのか、需要と供給について見直してみることも必要だと思う。